【幹部自衛官から転職】私の退職のきっかけとは?

現役の方で退職を迷っている、自衛官を退職して後悔している、そんなあなたの一助となれば幸いです。(2021年1月の記事をリライト)

1 退職にあたり・・・

自衛官は、国家防衛に直接携わる職としての使命観・やりがいがあります。しかも、自衛官は国家公務員であり、給与手当・福利厚生面からみても大変安定していると言えます。(後述する転職活動等を踏まえて、自衛官の給与手当・福利厚生面なら一般的な職よりも大変良かったな、ということを痛感しました・・・。)高校卒業後、防衛大学校に入校(入校理由は「学費がかからないこと」とやや不純)し、幹部自衛官としてエスカレーター式に入隊・勤務してきた自分にとっては、そんな地位・安定も捨てて、夫・父として退職に踏み切るには、めちゃくちゃ葛藤と勇気が必要でした。

しかし、「迷ったときは任務に立ち返れ。」。現職時代にも、部隊勤務や様々な教育を受けてきた中で、上司・教官から何度も言われてきた言葉を思い出し、退職へ踏み切ったというところです。ちなみに、この時、自分が考えた「任務」とは、「幹部自衛官として完遂しなければ任務」ではなく、更にその根柢にある「自分自身が完遂しなければならない任務」であることです。大変抽象的ですが、その任務を一言で表すと、「自分自身と家族が死ぬまで幸せであること」です。

2 「自衛官」の退職の理由とは?

自衛官が退職にあたり、最終的に行き着く「理由」はたったの一つです。「“服務の本旨”を達成できないから」。これだけだと思います。私自身も、家庭環境の変化、仕事に対して取り組む気持ちの変化、人生100年時代を家族とともに幸せに生き抜くということを考えたとき、「自衛官からは退職した方が良い」という状況判断に至りました。

服務の本旨(宣誓)は、「私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」というものですが、達成しようと考えたとき、自分の大事にしないといけないものも犠牲にしなければならないことをしっかりと自覚しなければなりません。その犠牲に対しての報酬が、高い給与(一般の仕事に比較し安定・高給)であり、国民の皆様からの感謝です。”感謝”が報酬という考え方もどうかと思いますが、実際、多くの自衛官が”感謝”を原動力にしていることは間違いないでしょう。

”自分の大切なものを犠牲”というのは、人の価値観によって変わってくると思います。私の考える”自衛官であることで犠牲にする大切なもの”は、「有事に家族といれないこと」「仕事以外の時間」でした。「(突飛かもしれないけど)戦争になったら家族を置いて出動」「家族と被災しても出動して災害派遣」「家族との時間」「まだ子供が小さいうちに直接共有できる時間」「妻と話す時間」「自分のやりたいことをやる時間」「ぼーっとする時間」・・・・。

ただ、気をつけなければならないのは、”自衛官だから”と決めつけてしまうのも、突飛な話です。生きていく上で、働いてお金を稼ぐことは必要ですし、そこに時間が割かれるのは必然です。しかし、私は幹部自衛官であることで、そのバランスがあまりにも仕事のために割かれていると確信しました。

3 私の退職の細部の理由は?

あなたは、例えば、災害派遣の出動の際、自分と家族が被災している中、出動する覚悟はありますか?

「行かないで!」とすがる家族を置いて登庁できますか?

以前の自分は、「できる。」と胸を張って言えました。家族にも理解を得て、家族の防災計画も立て、防災グッズも準備し、自分がいなくても避難できるよう、家庭内でも訓練を重ねていたからです。しかし、自分の置かれる環境、周囲の環境は変わります。退職時、私は胸を張って「できる。」とは言い難い状況・環境・心境になりました。特に、心境面が幹部自衛官として、服務の本旨を達成しながら勤務するには程遠い状況にありました。

私が勤務した10年間の自衛官として即応体制を保持するための時間的な制約、幹部自衛官という立場上の責任、家族孝行への制約、やりがいを全く感じない訓練、個人の成果を優先し業務を与える上司・それに従う自分と従った結果、部下にさせなければならないくだらない業務、、、、それらは、私の幹部自衛官としての心持に影響を与え、「幹部自衛官として勤務して、防衛出動・災害派遣で国民の生命・財産を守ることが、自分の家族を守ることと取れなくなってしまった。」=「危険を顧みず、職務の完遂ができない」=「服務の本旨を達成できない」という考え、「自分には、自分の手の届く範囲を守っていける能力・器量しかない。このままでは、一番大切で一番身近な家族を犠牲にしてしまう。」という考えに至ってしまい、退職を決意しました。

これまで、自身の犠牲も厭わず国家に尽くしてきた先輩方には申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、退職後も自分のできる範囲で自衛隊を応援・指示していこうという気持ちで、何とか打ち消すことができました。他にも、副次的ではありますが、「これをやりたい!」という前向きな気持ちもありました。そのことについては、転職活動のところで書きます。

4 退職後について


ブログの投稿を通じて後述しますが、まったく後悔はありません。ただ、「現役時代にもっとこうしておけば良かった~」という反省はたくさんあります。そのような自分の教訓を、退職・転職を迷っているあなた、定年退官まで頑張るあなたも含めて発信できたらと思っています。

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